旅の風景 3

ベトナム。ハノイ。ここはホーチミン市に比べると、少しインテリジェンスな雰囲気がしたな。町のひといきれもそれほど激しくなく、気候もおだやかで俺には居心地が良かった。夏の終わりっていう感じだったんで、俺は下駄で過ごしたよ。

ここの風景は、なんか不思議と夢で見たような気が何度もしたんだよね。店先に座ってたりさ、奥のほうで飯食ってたりさ、雑談してたりさ、こんな風景って、ほんの数十年前、日本にもあたりまえにあったんだよね。

祭りの夜みたくさ、子供たちが手をとりあって駆け回ったりしてた。
子供たちってさ、こうやって、いろんな人にもまれて育つべきだよなあって思ったよ。

ハロン湾はダイナミックな松島といった感じの景勝地。このときは中国人、アメリカ人、ジャーナリストのカップルといっしょになった。ごはんのときに「いただきます」と娘が手を合わせているのに、随分感心を示していたな。それって、なんの宗教かって聞いてた。

激しい戦争の経験を経て、成熟しつつある都市だった。日本と違うのは、戦争で負けなかった側なんだよね。それでも世界的には共産主義の概念なんかは崩壊しつつあるような気がする。それを考えると、この世の争いごとっていったいなんだろうとも思えるよ。