越南の旅21
市場から戻って、ホイアンへと出発する午後まで時間があり、「カイディン帝廟」へと行きたかったのだけれど、宿からはタクシーをチャーターしなければ行って帰ってこれない微妙な距離だった。それで宿でバイクを借りれないか訪ねたんだよね。英語もわからないスタッフさんだったけれど、なかなか親切でね、誰のなのか、たてかけてあったボロバイクを貸してくれて、とりあえずガソリンスタンドまでの地図をくれた。しかも忘れたけれど、数百円という安さ。それでも、カミさんは半日だからとさらに半分に値切ったけれどね。
まあ、でもバイクで知らない国の辺鄙な場所を走るのは、安易におすすめできないな。もしきみが事故やトラブルになったら、きっとたいへんだと思うからね。
さすがに僕らは、慎重に、
「右オーライ。左オーライ。出発」
とか、カミさんと声を掛け合いながら運転したよ。
そうそう、僕らは不勉強でさ、このあいだ、
「海外旅行保険は必ず加入した方がいいですよー! 」
と姫に注意された。だから、今度行くときは入っておこうと思ってるんだよね。でも、この場合、どっちにしろ免許が必要なのだろうし、なにかあっても保障はないのだろうな。そして、警察に呼び止められたら、いやな思いをして、賄賂が必要になるかもしれない。
それでもさ、カミさんはひやひやしていたようだけれど、僕はめちゃくちゃ楽しかったんだ。まあ、安全で無責任なものってたいてい面白くないものだしね。たとえば、インターネットの匿名の意見なんかがぜんぜん響かないようなものでさ。
車道の基本は右側通行だけど、たまに逆走している人もいる。間合いを見ながら右折、左折をするのだけれど、ルールや信号に頼り切ってガチガチに走る日本とちがって自己責任なので、気を付けながら、ゆったりと運転している人が多いような気がした。ぶっ飛ばしたり、煽ったりみたいなのはなく、案外快適。でも、まあ、田舎だったからかな。ときどきこんなふうに牛も横切ったりしたよ。
たどりついた、そのグエン朝、最後の皇帝を祀った建物はちょっとした山の中にあった。こういう場所は、とりあえず、なにか威嚇するようなオブジェが入口にあるものだよね。
石でできた家来みたいな人も中庭で待っていた。死んでも、ここまで権威が必要なんだから帝王っていうのもたいへんなもんだよね。でも、トランプみたいにさ、そんなのが好きなら、まんざらでもないのかもしれない。









