クロージング・タイム
慌てるとこういうことになりがちですね。予約でいっぱいだったある週末前にやらかしてしまい、ずいぶん焦りました。
しかも、その日は買い出しも多く、当店のジェラートは「くろべ牧場まきばの風」まで行って仕入れているのですが、こんな日にかぎってピカピカのアイスバーン。我がボロ車で、この丘の上までのぼりきるのは肝をひやしました。
でも、忙しかった日の夜の閉店時間は私は好きです。
皆様が帰ったあと、片付けをすませ、こっそりグラスにバーボンを注ぐ私。そうやって、ひとり、ぼんやりと、流れていく時間に身をまかせていると、不思議と私は、通り雨にあった海辺の景色だとか、寝室の金魚鉢だとか、川辺の寂びれたホテルだとか、へんに古い記憶が、脈略なく、断片的に思い浮かんでは消えていくのです。
いらっしゃったお客様も思い返したりします。
「この黒部でそんな店はあかん! 私は煙草を吸うひとなんや! 」
我が店の禁煙についてそう言い捨て、憤慨して帰っていった、あるご年配のお客様がおりました。
でも、そのお客様は結局、それから今までに5回ほども、ふらりとご来店してくれ、
「店チョー、ナポリタン作ってくれ」
と、ある夜などはメニューにないものを注文し、私はありあわせの材料でそれらしきスパゲティを作ると、
「うまい。学生の頃を思い出す味や」
と言ってくれました。聞く聞くしておりますと、やはり団塊の世代の方で、なんと、あの新宿騒乱で石を投げたなんていう思い出話まで出てまいりました。まさに歴史の中の人ですね。
「あんた、がんばって、今のうちやりたい事をやりなさいよ! 」
とはげましてもくれました。
忙しかったある日。閉店後、「じゃ~ん」と、カミさんがケーキを出してくれました。
「あっ、そうだった」
そのとき、その日が自分の誕生日だということを思い出しました。
もう50歳になります。なにか先が見えてくる年齢ですね。それどころか、もしかしたら、あしたくたばるかもしれません。あの、ご年配がおっしゃるとおり、今、ここで、やれることを精一杯やって行こうと私は考えております。
2020.02.19 | Comments(0) | Trackback(0) | 日記









